abc予想の証明が実は凄いと言う話
最近の数学上の出来事で最も凄いと思うこと
2017年の年末も押し迫った12月16日にもの凄いニュースがありました。政治や経済や面ではなく、数学での出来事でした。数学に余り興味がなく、通常の生活や仕事で数学を使うことのない人にとっては、「それ、何?」と言ったところでしょう。確かにそうかもしれません。先日知人と懇親会をしたとき、どういう訳か数学の話題になりました。文系の方でしたが、営業職に方、元新聞記者で現在会社のリサーチ会社にいる方でしたが、二人とも社会に出てから微分や積分は使ったことがないから、数学を勉強しても仕方がないといっていました。そうかもしれませんが、自分の知らないところで、いろいろな数学が使われていたり、自分の使っている機器にかなり複雑な数学理論が使われている例は多くあります。
そこで、abc予想の証明についてですが、これが証明されるとかつての難解な定理の証明が、あっと言う間に証明されてしまいます。abc予想については、既に書いていますので、次のリンクを参照してください。
abc予想の証明結果から何とFLTがでてくる
abc予想が正しいと最終的に確認されたらと言う前提はありますが、ほとんど確実に正しいらしいようですから、この前提で考えてみましょう。
なんと、abc予想からフェルマーの最終定理が出てくるのです。フェルマーは、360年かけて、1995年にワイルズにより証明された数論の金字塔とも言われるものです。
abc予想とは、a,b,cを自然数とする時、a,b,cが互いに素であれば、任意の\(ε\)に対して、異なる素因数の積を\(d\)とすれば、\(d>c^{1+ε}\)を満たす\((a,b,c)\)の組は高々有限個であろう、と言う予想です。これを、\(d=rad(abc)\)と書きます。
ここで、フェルマーの最終定理を考えてみましょう。フェルマーの定理とは、次のものです。
\(x,y,z\)を自然数とし、\(n\)を\(n≧3\)の自然数とする時、
\(x^n+y^n=z^n\)を満たす自然数の組\((x,y,z)\)は存在しない。
\(abc\)予想が正しいとします。つまり背理法です。
つまり\(a=x^n,b=y^n,c=z^n\)とおきます。
abc予想(正しいと検証されている)から
\(c=z^n<rad(x^ny^nz^n)^2=rad(xyz)^2≦(xyz)^2<(z・z・z)^2=z^6\)
従って、\(n<6\)となります。
よって、\(n=3,4,5\)となりますが、\(n=3\)はオイラーに、\(n=4\)はフェルマーに、\(n=5\)はルジャンドルにより証明されていますから、フェルマーの大定理は証明されました。