クロネッカーの青春の夢

クロネッカー

大学に入ると、初年時の数学は、解析学と線形代数学をやります。線形代数学は、行列や行列式や1次変換などを学びます。このなかで、クロネッカーのデルタを学びます。これは、\(δ_{ij}\)と書かれ、\(δ_{ii}=1、δ_{ij}=0 (i≠j)\)と定義されます。クロネッカーは、デデキントと並んで代数的整数論の先駆者として知られています。

クロネッカーの業績

19世紀の数学者で、数学の分野ではデデキント(独)と並んで、代数的整数論の構築者の一人です。ただ、デデキントとクロネッカーでは、その取り組み方が違いました。デデキントは代数的数を1つの数と捕らえましたが、クロネッカーは整数の組としてとらえるものであり、ここに大きな違いがありました。
クロネッカーは、整数、とくに自然数に強い思いがありました。「神は整数(自然数)を創り給うた。それ以外の数はみな人間が作ったものだ。」と言うのがクロネッカーの有名な言葉です。

クロネッカーの青春の夢

「虚二次体のどんなアーベル拡大も、虚数乗法を持つ楕円関数の特異モジュールと等分値から得られるだろう」という予想のことです。この名前は、クロネッカーがデデキントへ宛てた手紙の中で、この命題の証明を「私の最愛の青春の夢」(mein liebster Jugendtraum)と書いたことに由来しています。

「この数箇月の間、私はある研究に立ち返って鋭意心を傾けてきました。この研究が終結するまでにはなお多くの困難が行く手に立ちはだかっていたのですが、私は今日では最後の困難を克服したと信じます。そのことをあなたにお知らせするよい機会と思います。それは私の最愛の青春の夢のことです。くわしく申し上げますと、整係数アーベル方程式は円周等分方程式で汲み尽くされるのですが、まさしくそのように、有理数の平方根をともなうアーベル方程式は特異モジュールをもつ楕円関数の変換方程式で汲み尽くされるという事実の証明のことなのです。」

この予想は、クロネッカー・ウエーバーの定理「有理数体Qのどんなアーベル拡大も、指数関数の等分値(=1のn乗根)から得られる」を虚2次体に拡張したものですが、クロネッカーは証明できませんでしたが、日本の高木貞二により類体論を用いて肯定的に証明されました。

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