アダマール

ジャック・アダマール

アダマールの名前は、数学の様々な分野で現われます。そのなかで、最初に目にするのは、べき級数の収束半径を定めるコーシー・アダマールの定理だろうと思います。また、偏微分方程式のコーシーの問題に関する研究もあります。ただし、アダマールはコーシーの死後、8年後に生まれていますので、子弟関係はありませんが、98年間生きた長寿の数学者として知られています。これは、数学者の長寿記録かもしれません。アダマールはもう一つ記録を持っています。 Ecole Polytechnique フランスの秀才の登竜門として入学試験は厳しい競争になっています。バカロレア(大学入学資格試験)を合格後、数年間受験勉強してやっと合格できると言われています。アダマールはその入試に、2000満点中1875点という驚異的な最高記録で合格しています。2018年のセンター試験で900点満点をとった東京大学理科一類志望の生徒がいたようですが、(日比谷高校の生徒らしいです。)問題レベルはかなり易しいとはいえ素晴らしいことだと思います。青年時代のアダマールも凄かったようです。もうすぐ始まる国立大学入試の受験生もあやかりたいところですね。
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アダマールの業績

アダマールは解析学の面での活躍が多いのですが、幾何学にも多大の興味を持っていました。アダマールは、ユダヤ系のフランス人で政治的には左派でした。青年時代に有名なドレフェス事件が起こって、フランスの国論を二分されるような騒ぎになりました。アダマールはドレフェスの遠い親戚であったので、ずっと反体制派であったようです。第二次大戦後、ハーバードで行われた国際数学者会議には、アダマールは名誉議長として招待されていましたが、アメリカ入国のビザが容易に下りませんでした。フランス、アメリカ両国の数学者の強い希望によって、会場近辺のみという制限で入国が許されています。

アダマールの業績は多くありますが、学位論文で「コーシー・アダマールの公式」やそれを一般化した整級数で与えられた解析関数の有理型半径を定める公式を得ています。
アダマールの名前を一躍有名にしたのは、素数定理の完全な証明を初めて与えたということでしょう。(1895) 素数定理とは、\(x\)を越えない素数の個数を\(π(x)\)とすると、    \(x→∞\)のとき、\(π(x)~x/logx\)となるであろうと言うものです。ガウスが素数の分布を統計的に調べ予想したものです。たくさんの数学者の挑戦ののち、アダマールとベルギーのド・ラ・ヴァレ・プーサンという数学者が、ほぼ同時期に、ほぼ同じ方法で、独立に証明に成功しました。その鍵になったのが、あのリーマンのゼータ関数 \(ζ(s)=\displaystyle \sum_{ n = 1 }^{ ∞ } 1/n^s\)に関するものでした。そして\(ζ(s)=0\)が\(Re(s)=1\)に零点を持たないと言うことを使っていました。ここで\(s\)は複素数です。

現代では、アダマールのもっとも有名な業績は偏微分方程式論です。また、組み合わせ理論でのアダマール行列や、行列式のアダマール評価などが有名です。

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