じっくり考える問題-解答編-

普通の問題は、1問あたり、25分~30分程度で解くことを前提にされていますが、ここでは難し目の問題をじっくり解いてみてください。
一般入試ではありませんが、これも入試問題です。

【問題1】

全ての実数\(x\)に対して定義された関数\(f(x)\)で、必ずしも連続ではない関数を考えます。
この関数が、\(f(x+y)=f(x)+f(y)\) \(f(xy)=f(x)f(y)\) \(f(1)=1\)
を満たすとします。

(1) 全ての有理数\(x\)に対して、\(f(x)=x\)であることを示してください。
(2) 実数\(x,y\)について、\(x≧y\)ならば、\(f(x)≦f(y)\)であることをしめしてください。
(3) 全ての\(x\)に対して、\(f(x)=x\)であることを示してください。

【解答1】

(1) \(f(x+y)=f(x)+f(y)\)・・・・・・・・・①
\(f(xy)=f(x)f(y)\)・・・・・・・・・・・・②
\(f(1)=1\)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・③
\(n\)を整数とするとき、①,③より
\(f(n+1)=f(n)+1\) よって、全ての整数\(n\)に対して
\(f(n)=n\)であり、これは数学的帰納法により容易に証明されます。(省略)
また、\(x\)が有理数であるとき、\(x=p/q\)とします。 \((p、qは互いに素の整数で、q>0)\)
② から、
\(f(p/q・q)=f(p/q)・f(q)\)から、\(f(p/q)=f(p)/f(q)=p/q\)
従って、全ての有理数\(x\)にたいして、\(f(x)=x\)

(2) \(h≧0\)のとき、②から
\(f(h)=f(\sqrt{h}・\sqrt{h})=f(\sqrt{h})・f(\sqrt{h})=(f(\sqrt{h}))^2≧0\)
①から、
\(f(x+(y-x))=f(x)+f(y-x)\)⇔\(f(y)-f(x)=f(y-x)\)
よって、\(y-x≧0なら、f(y)≧f(x)\)ですから、題意は成り立ちます。

(3) これが、レベルの高い問題です。

実数\(x\)にたいして、有理数の数列 \(a_i,b_i\) \((i=1,2,3,・・・・・・・)\)を考え
\(a_i≦x≦b_i\) \((i=1,2,3・・・・・・・・・・)\)
\(\displaystyle \lim_{ n \to \infty }(a_i-b_i)=0\) ・・・・・・・・・・・④
となる 有理数数列\(a_i,b_i\)が存在します。

よって、(2)から
\(f(a_i)≦f(x)≦f(b_i)\)となり、さらに(1)から、
\(a_i≦f(x)≦b_i\)となります。

従って、\(a_i-b_i≦f(x)-x≦b_i-a_i\)
よって、\(\vert f(x)-x\vert≦\vert b_i-a_i\vert\)

ここで、\(\vert f((x)-x\vert>0\)とすると、④に矛盾するので、
\(\vert f((x)-x\vert=0\)となります。
従って、全ての実数\(x\)に対して、\(f(x)=x\)であることが示されました。

【問題2】

数列 \(a_n\)を、\(a_n=n!/(\sqrt{n}n^ne^{-n})\) で定めます。

\(\displaystyle \lim_{ n \to \infty } a_n=\sqrt{2π}\)

であることが知られています。これを次の手順でしめしてください。

(1) \(b_n=2^{2n}(n!)^2/(\sqrt{n}(2n)!)\) で定めます。
\(0<x<π/2\)のとき、\(sin^{2n+1}x<sin^{2n}x<sin^{2n-1}\)であることを用いて、

\(\displaystyle \lim_{ n \to \infty } b_n=\sqrt{π}\) であることを示してください。

(2) 全ての自然数\(n\)に対して、
\(0<log(a_n/a_{n+1})<100/(n(n+1))\)であることを示してください。

(3) \(\displaystyle \lim_{ n \to \infty } a_n/a_{n+1}=1\) であることを示してください。

(4) \(\displaystyle \lim_{ n \to \infty } a_n=\sqrt{2π}\) を示してください。

【解答2】

(1) \(I_n=\displaystyle \int_{0}^{π/2}sin^nxdx\)   \((n=1,2,3・・・・・・)\)とおきます。
部分積分により、
\(I_{n+2}=(n+1)I_n\) から \(I_{n+2}=(n+1)/(n+2)I_n\)・・・・・・・①
また、\(I_0=π/2、I_1=1\)・・・・・・・・・・・②

よって、\(I_{2n}=(2n)!/(2^{2n}(n!)^2・π/2=π/(2\sqrt{n}b_n)\)
また、\(I_{2n-1}=b_n/(2\sqrt{n})\)
さらに、\(I_{2n+1}=2n/(2n+1)・b_n/(2\sqrt{n})\)

ここで、\(0<x<π/2\) で \(0<sinx<1\)から、
\(I_{2n+1}<I_{2n}<I_{2n-1}\)
従って、\(π<(b_n)^2<π・(2n+1)/2n\) が成り立ち、この不等式で
\(n→∞\)とすれば、挟み撃ちの原理から、
\(\displaystyle \lim_{ n \to \infty } b_n^2=π\)
よって、\(\displaystyle \lim_{ n \to \infty } b_n=\sqrt{π}\)

(2) \(a_n/a_{n+1}=((n+1)/n)^{n+1/2}・e^{-1}\)
よって、\(log(a_n/a_{n+1})=(n+1/2)log(n+1)/n-1\)・・・・・・・③

\(log(n+1)/n=\displaystyle \int_{n}^{n+1}1/xdx\)であり、
\(y=1/x\)は下に凸であることから、
\(2/(2n+1)<\displaystyle \int_{n}^{ n+1} 1/x dx<1/2・(1/n+1/(n+1)+1\)より
\(2/(2n+1)<log(n+1)/n<(2n+1)/(2n(n+1))\)
\(1<(n+1/2)log(n+1)/n<1+1/(4n(n+1))\)
よって、③から
\(0<log(a_n/a_{n+1})<1/(4n(n+1))\)
従って、\(0<log(a_n/a_{n+1})<100/(n(n+1))\)

(3) \(log(a_n/a_{2n})=\displaystyle \sum_{ k=n}^{2n-1}log(a_k/a_{k+1}\)であり、
(2)を用いると

\(0<log(a_n/a_{2n})<\displaystyle \sum_{ k=n}^{2n-1}100/(k(k+1))\)
=\(50/n\)
よって、\(0<log(a_n/a_{n+1})<50/n\) より、
\(n→∞\)とすれば、挟み撃ちの原理から、
\(\displaystyle \lim_{ n \to \infty } a_n/a_{n+1}=1\)

(4) \(a_n/a_{n+1}=\sqrt{2}・1/a_n・b_n\)

従って、\(a_n=\sqrt{2}b_n/(a_n/a_{2n})\)
よって、(1),(3)より、

\(\displaystyle \lim_{ n \to \infty }\sqrt{3}b_n/(a_n/a_{n+1}=\sqrt{2π})\)

(注) \(n!~\sqrt{2π}・n^{n+1/2}・e^{-n}\)が成り立つことになりますが、これを
Stiringの公式と言います。本問は、Stiringの公式からヒントを得た問題と言えます。

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