論証-解答編-
論証について
数学において、論理、論証は極めて重要なものです。入試問題でも、必要条件や十分条件等を問うものや、本格的な論理証明を問うものなどが出題されています。論証の問題の答案は、その論理が正確で誤謬のないものを書かなくてはなりません。今回はそういう問題をとりあげてみましょう。
論証の問題
【問題1】
半径\(2\)の円を半径\(1\)の円で完全に覆い尽くすには、半径\(1\)のが最小いくつあればいいでしょうか。
【解答1】
ある図形のなかに、大きさの決まった円をたくさん入れたり、できるだけ少ない円で覆い尽くすという問題はかなり難しい問題です。
半径\(1\)の円を、\(C_1\)、半径\(2\)の円を、\(C_2\)とします。
\(C_2\)を覆い尽くすには、円周を覆い尽くすことが必要です。\(C_1\)が切り取る弧の長さが最大になるのは、\(C_1、C_2\)の交点が、\(C_1\)の直径になるときだから、\(1\)個の\(C_1\)は最大で、\(C_2\)の中心角\(60°\)の弧を覆います。
従って、\(C_1\)が、\(C_2\)の円周を覆うには、少なくとも\(6\)個必要だが、中心は覆われません。よって、少なくとも\(7\)個必要となりますが、逆に\(7\)個なら、実際に\(C_1\)で\(C_2\)を覆い尽くすことができます。よって、\(7\)個となります。
【問題2】
\(6\)つの都市があって、どの2都市間も2つの航空会社のどちらか一方の航空路で結ばれています。このとき、どのように結ばれていても、適当な3都市を選べば、その2都市ずつを結ぶ3つの航空路が、同じ航空会社のものであるようにすることができます。これを証明してください。
【解答2】
路線の数は、\({}_6 \mathrm{ C }_2=15\)、3都市の組み合わせは、\({}_6 \mathrm{ C }_3=20\)ありますから、場合分けを考えるのであれば、大変な難問になってしまいます。では、どうするか。
\(1\)つの都市に着目すると、この都市と他の\(5\)都市を結ぶ航空路は\(5\)本あり、そのなかで、どの航空路も2つの航空会社(\(A,B\)としましょう。)のうちどちらかですから、\(5\)本の航空路のうち\(3\)本は、同じ航空会社のものとなります。
ここで、\(6\)の航空路を、\(C_1,C_2,・・・・・・,C_6\)とし、\(C_1\)が\(C_2,C_3,C_4\)と同じ\(A\)の航空会社で結ばれているとしても一般性を失いません。
3都市\(C_2,C_3,C_4\)に着目すれば、
1)\(C_2,C_3,C_4\)が、\(B\)社の航空路で結ばれていれば、適当な3都市に、\(C_2,C_3,C_4\)を選べばよいことになります。
2) \(C_2,C_3,C_4\)のなかに、\(A\)社の航空路で結ばれている2都市があれば、\(C_2とC_3\)が\(A\)社の航空路で結ばれていれば、適当な3都市として、
\(C_1,C_2,C_3\)を選べばいいし、他の場合も同様にできます。
従って、題意は常に成り立ちます。
【問題3】
多角形の内角のうち、鋭角は\(3\)個よりも多くないことを証明してください。
【解答3】
考えにくいですが、具体的に考えてみましょう。
3角形では、明らかに題意は成り立ちます。
さらに、4角形の場合は、内角の和は、\(2π\)ですから、\(4\)つの内角が、すべて鋭角になることはありません。
次に、\(n\)角形\((n≧5)\)の場合は、内角の和は、\((n-2)π\)です。ここで、内角のうちに鋭角のものが、\(4\)つあるとすれば、
残りの\((n-4)\)個の内角の和を、\(Θ\)とすれば、\(Θ>(n-2)π-π/2・4=(n-4)π\)より大きいことになります。
ここで、内角は全て\(π\)より小さいから、不合理となります。従って、\(n\)角形の内角のうち鋭角は\(3\)個より多くはないことになります。
【問題4】
整数を要素とする集合\(P\)が、以下の条件を満たすものとします。
(1) \(0\)は\(P\)に属しません。
(2) \(0\)でない要素\(n\)が\(P\)に属していれば、\(-n\)は\(P\)に属しません。
(3) \(0\)でない要素\(n\)が\(P\)に属さなければ、\(-n\)は\(P\)に属します。
(4) 整数\(m,n\)が\(P\)に属していれば、\(m+n\)も\(P\)に属します。
(5) 整数\(m,n\)が\(P\)に属していれば、\(mn\)も\(P\)に属します。
このとき、集合\(P\)を求めてください。
【解答4】
慎重に考えれば、それほど難しくありません。
\(P=N\)={1,2,3,・・・・・・・・・・}です。