無限級数の収束条件とは-そしてゼータ関数ζ(s)-
無限級数とその収束条件
無限級数は、高校数学の数Ⅲでも学びますし、難関大学の入試問題にもよく出題されます。無限級数は、\(\displaystyle \sum_{n= 1 }^{∞} a_n\)の収束、発散をを考えるわけですが、これは、\(S_n=\displaystyle \sum_{k= 1 }^{ n } a_k\)という部分和\(S_n\)を考えたときに、極限\(\displaystyle \lim_{ n \to \infty } S_n\)が有限確定値をもつのかどうかを調べることになります。
無限級数の収束条件をどう考えるのか
ここでは、与えられた級数\(\displaystyle \sum_{n= 1 }^{∞} a_n\)の収束性を判定する方法を考えてみましょう。
(Ⅰ)\(0<k<1\)の定数\(k\)で、ある番号以上で\(\sqrt[n]{a_n}<k\)が成り立つならば、\(\displaystyle \sum_{n= 1 }^{∞} a_n\)は収束します。
(有限個の項を取り除いても、級数の収束性に影響しませんので、ある番号以上という条件で十分です。)
【証明】
\(a_n<k^n,0<k<1\)ですから、\(S_n<k+k^2+・・・・・・・+k^n<k/(1-k)\) 従って、\(S_n\)は有界ですから、\(\displaystyle \sum_{n= 1 }^{∞} a_n\)は収束します。
(Ⅱ) \(0<k<1\)であり、ある番号以上常に\(a_{n+1}/a_n<k\)ならば、\(\displaystyle \sum_{n= 1 }^{∞} a_n\) は収束します。
【証明】
仮定から、\(a_n<a_1k^{n-1}\)ですから、\(S_n<a_1(1+k+k^2+・・・・・・・+k^{n-1}<a_1/(1-k)\) 従って\(S_n\)は有界ですから、収束します。
これら(Ⅰ)(Ⅱ)では、\(\displaystyle \sum_{n= 1 }^{∞} a_n\)を幾何級数\(\displaystyle \sum_{n= 1 }^{∞} k^n\)と比較してその収束性を判定しています。この前提として、正項級数\((a_n>0)\)は単調に増加するから、収束の条件は\(S_n\)の有界性に帰するということなのです。
級数の収束性の判定に、無限区間の積分と比較し有界性を判定できる場合があります。ここでも正項級数を考えます。
(Ⅲ) \(\displaystyle \sum_{n= 1 }^{∞} 1/n^s (s>0)\)
は、\(s>1\)なら収束し、\(0<s≦1\)なら発散します。
【証明】
\(x>1\)において、\(1/x^s\)は単調に減少しますから、
\(\displaystyle \int_{ n}^{n+1}1/x^sdx<1/n^s<\displaystyle \int_{n-1}^{n}1/x^sdx\)・・・・・・・・・①
よって、\(s>1\)ならば、
\(\displaystyle \sum_{n=2}^{∞} a_n<\displaystyle \int_{1}^{m}1/x^sdx<\displaystyle \int_{1}^{ \infty }1/x^sdx=1/(s-1)\)
従って、部分和の有界性がいえますので、\(\displaystyle \sum_{n= 1 }^{∞} 1/n^s\)は収束することが分かります。
以前にも説明しましたが、
\(ζ(s)=\displaystyle \sum_{n= 1 }^{∞} 1/n^s\)はRiemannのゼータ関数といいます。ただしここでは、\(s\)は正の実数として考えていますが、Riemannは、\(s\)を複素数で考えています。\(ζ関数\)に関する予想がなされていています。Riemann予想とは、\(ζ(s)=0\)の非自明な複素零点は、その実部が\(1/2 (Re(s)=1/2)\)であろうというものでした。これは素数分布にも関連していて、いまだ150年以上未解決です。
次に\(s=1\)とすると、
\(\displaystyle \sum_{n= 1 }^{m} 1/n>\displaystyle \int_{1}^{m+1}1/xdx=log(m+1)\)
よって、\(\displaystyle \sum_{n= 1 }^{∞} 1/n\) は発散します。 \(\displaystyle \sum_{n= 1 }^{∞} 1/n\)は調和関数といいますが、初等的にも発散することを示すことが出来ます。
\(0<s<1\)のときは、さらに強い理由で発散します。
\(\displaystyle \sum_{n=2}^{m} 1/(nlogn)>\displaystyle \int_{2}^{m+1}1/(xlogx)dx=loglog(m+1)-loglog2\)となり、発散することがわかります。
Eulerの定数
上の①式で、\(s=1\)とすれば、
\(\displaystyle \int_{n}^{n+1}1/xdx<1/n (n≧1) \)
よって、\(1+1/2+・・・・・・・・・・+1/n>\displaystyle \int_{1}^{n+1}1/xdx=log(n+1)\)
従って、\(1+1/2+・・・・・・・・・・+1/n-logn>log(n+1)/n>0\)
また、\(1/(n+1)<\displaystyle \int_{n}^{n+1}1/xdx=log(n+1)-logn\)
従って、\(1+1/2+・・・・・・・・・・+1/n-logn\) は\(n\)に関して、単調に減少し正であるから、下方に有界です。よって、\(n→∞\)で収束することがわかります。
つまり、\(\displaystyle \lim_{ n \to \infty }(1+1/2+・・・・・・・・+1/n-logn)=C\)となる極限値\(C\)が存在します。この\(C\)をEulerの定数(オイラー定数)といいます。(この数をγと書くこともあります。)
\(C=0.5772156・・・・・・・・\)ですが、この数がどういう数なのかまだよく分かっていません。無理数なのかどうか、また超越数(代数方程式の解になる数かどうかということです。)なのかどうかもまだ分かっていません。