物理現象の問題-解答編-
物理学の現象を数学で解く
物理現象は、大概簡単な微分方程式で表されます。大変すっきりしたごく少数の式で、物理現象が理解できるのですから、ある意味驚異でもあります。物理学や数学の天才に負うところが多いですが、われわれが、自然現象を理解するのにとても恩恵を受けています。ほとんどの物理現象は、ごく少数の微分方程式で理解され、その微分方程式を解くことにより、現象を明確にすることができることになります。従って、どういう微分方程式をたてるか、そしてその微分方程式をどう解くかが物理を理解することといえると思います。解説と問題は次のリンクです。物理現象の問題
物理と数学の問題
【問題1】
半直線\(OX\)が点\(O\)のまわりを毎秒\(1\)ラジアンの角速度で回転しています。\(OX\)上を運動する点\(P\)が、時刻\(t\)秒において、点\(O\)から\(e^{2t}\)の距離にあるとします。時刻\(0\)秒から\(2π\)秒の間に、点\(P\)の動く道のりを求めてください。(東京大学)
【解答1】
道のり(距離)をもとめるのですから、速さを求めて、積分計算するだけです。難しくはありません。
\(t\)秒後の点\(P\)の位置を、\(P(x,y)\)とすると、
\(x=e^{2t}cost,y=e^{2t}sint\)で表されますから、
\(dx/dt=e^{2t}(2cost-sint)\)
\(dy/dt=e^{2t}(2sint+cost)\)
よって、求める道のり\(s\)は、
\(s=\displaystyle \int_{0}^{2π}\sqrt{(dx/dt)^2+(dy/dt)^2} dt\)
=\(\displaystyle \int_{0}^{2π}\sqrt{5}e^{2t}dt\)
=\(\left[ 1/2e^{2t}\right]_0^{2π}=\sqrt{5}/2・(e^{2π}-1)\)
【問題2】
水平方向を\(x\)軸、鉛直方向に\(y\)軸をとり、\(xy\)平面上で投げ出された物体の位置を、\(P(x,y)\)とすると、位置ベクトル\(\overrightarrow{ OP }\)に対して、次のニュートンの第2法則が成り立ちます。
\(d^2\overrightarrow{OP}/dt^2=-g・\overrightarrow{i }\) なお\(\overrightarrow{i }\)は\(x\)軸方向の単位ベクトルで、\(g\)は重力加速度です。(ここで、空気抵抗などは、無視することにします。)
傾斜\(30°\)の長い坂道の途中で、上り方向と下り方向に向かって、一定の初速で石を投げるとすると、坂道を最も遠くに石を届かせるためには、それぞれ何度の仰角で石を投げればよいか、求めてください。
(神戸大学)
【解答2】
物理でよくある問題です。座標を考え微分方程式を解くことになります。運動は標準的です。
石を投げた地点を座標原点\(O\)とします。
上りの場合は、坂道の傾斜が\(30°\)ですから、坂道の式は\(y=1/\sqrt{3}・x\)とおけます。
石を投げ上げるときの初速を\(v_0\),仰角を\(α\)とします。
微分方程式は、\(d^2x/dt^2=0, d^2y/dt^2=-g\)・・・・・・・・・・①です。
初期条件\(t=0\)のとき\(x=y=0\) \(dx/dt=v_0cosα、dy/dt=v_0sinα\)
このもとに、微分方程式①を解くと、
\(dx/dt=v_0cosα\) さらに積分して、初期条件を考慮すると、
\(x=v_0tcosα\)
同様にして、\(y=-1/2gt^2+v_0tsinα\)
石が坂道に再び来るときは、\(x,y\)は坂道の式を満たしますから、
\(-1/2gt^2+v_0tsinα=1/\sqrt{3}・v_0tcosα\)
\(t>0\)だから、\(t=2v_0/(\sqrt{3}g)(\sqrt{3}sinα-cosα)\)
これから、\(x=v_0cosα・2v_0/(\sqrt{3}g)・(\sqrt{3}sin2α-cos2α)\)
=\(v_0^2/(\sqrt{3}g)・{2sin(2α-30°)-1}\)
この3角関数の最大値は、\(sin(2α-30°)=1\)のときで、\(2α-30°=90°\)から、
\(α=60°\)のときです。
投げ下ろすときは、斜面を\(y=1/\sqrt{3}・x\)とすればよいですから、
同様にすれば、\(α=30°\)となります。
【問題3】
座標平面上に2点、\(P,Q\)があります。\(P\)は原点を中心として半径\(1\)の円上を角速度の大きさが\(1\)ラジアン/秒で正の向きに等速円運動をしています。また、\(Q\)は、点\(P\)を中心として、半径\(a\)の円周上を\(ω\)ラジアン/秒\((ω>0)\)の速さで等速円運動をしています。
時刻\(t=0\)で\(P\)は、\(P(1,0)\),\(Q\)は、\(Q(a+1,0)\)にあるとします。
(1)ある時刻において、点\(Q\)の加速度が\(0\)ベクトルになったとします。\(a=1/3\)のとき、\(ω\)を求めてください。
(2)\(a=1/2,ω=2\)とします。\(t=0~2π\)の間で、\(Q\)が動いた距離を求めてください。
(東京医科歯科大学)
【解答3】
\(t\)秒後には、\(\overrightarrow{OQ}=\overrightarrow{OP}+\overrightarrow{PQ}\)
=\((cost+acosωt,sint+asinωt)\) であるから、
\(Q(x,y)\)とすると、\((dx/dt,dy/dt)=(-sint-aωsinωt,cost+aωcosωt)\)・・・・・・・・・①
\((d^2x/dt^2,d^2y/dt^2)=(-cost-aω^2cosωt,-sint-aω^2sinωt)\)・・・・・・・・②
(1)加速度ベクトルが\(0\)ベクトルなら、②から
\(cost=-aω^2cosωt, sint=-aω^2sinωt\)より、
\(a^2ω^4=1\)
ここで、\(a=1/3\)のときは、\(ω=\sqrt{3}\)
(2)\(a=1/2,ω=2\)のときは、①より、
\(Q\)の道のりは、
\(\displaystyle \int_{0}^{2π} \sqrt{(dx/dt)^2+(dy/dt)^2}dt\)
=\(\displaystyle \int_{0}^{2π} f(x) dx=2\displaystyle \int_{0}^{2π}\sqrt{2+2cost}dt\)
=\(4\displaystyle \int_{0}^{π}\vert cos(t/2) \vert dt\)
=\(8\)