マンジェル・バルガヴァ-第二のラマヌジャンか-

マンジェル・バルガヴァ(インド系カナダ人の天才数学者)

インドの天才数学者といえば、第一に挙げられるのは、ラマヌジャンでしょう。その天才的な予側能力や洞察力は、様々なエピソードとともに、他の数学者の追随を許さないと言っても過言ではないと思います。ラマヌジャンについては、既に紹介してありますので、次のリンクを見てください。天才とは-インドの天才数学者ラマヌジャン-  最近、第二のラマヌジャンかと言われる天才数学者が注目されています。その人はマンジェル・バルガヴァというインド系の数学者です。

マンジェル・バルガヴァとは何者なのか

マンジェル・バルガヴァをご存知の方は、それほど多くはないと思います。バルガヴァは、まさしくラマヌジャンの再来と言ってもいいかもしれません。ラマヌジャンに匹敵するような業績をすでに上げています。1974年カナダの出身のインド系カナダ人で、ハーバード大数学科を最優秀で卒業し、プリンストン大学でフェルマーの定理を証明したアンドリュー・ワイルズ(フィールズ賞特別賞受賞)を指導教官として学位をとっています。2003年からプリンストン大学教授の職にあります。また、彼自身も2014年に数学のノーベル賞と言われるフィールズ賞を取っています。バルガヴァの専門は、整数論、代数幾何学などです。

マンジェル・バルガヴァは、何を成し遂げたのか

バルガヴァは、2014年のSeoulのICM(国際数学者会議)でフィールズ賞を受賞しました。2014年のフィールズ賞は、イラン出身の女性数学者のミルザハニ・ スタンフォード大教授が女性初の受賞を成し遂げ、多くの注目を得た年でもありました。フィールズ賞は、4年に1度、40歳以下という受賞基準があり、ある意味ノーベル賞より厳しいかもしれません。マンジェル・バルガヴァのフィールズ賞受賞理由は、「数の幾何における強力な新技法を開発し、小さな階数の環を考察することや楕円曲線の平均階数の面での評価に応用したこと」となっています。ラマヌジャンのような一般受けするエピソードが、まだあるわけではないので、まだそれほど知られてはいませんが、成し遂げたことは、ラマヌジャンに匹敵するものがあると思われます。バルガヴァは、インドのタブラという太鼓の達人でもあるそうです。彼にとっては、数学にもリズムがあって、音楽と数学が意識外で間接的に結びついて、数学の発想を得ることがあるのだそうです。ラマヌジャンはナマーギリの女神でした。何か共通点があるのかもしれません。

受賞理由の数の幾何(geometry of number) に関連することを書いておきます。

1)素数定理

\(x\)より小さい素数の個数を\(π(x)\)とし、\(Li(x)=\displaystyle \int_{2}^{x}dt/\log t\)とすると、
\(\displaystyle \lim_{ x \to \infty }π(x)/Li(x)=1\) ・・・・・・・・・①
これが、素数定理で、ガウスが最初に予想した定理です。ガウスは素数表から、\(x\)の範囲を決めて、素数の個数をしらべ、その結果から①を極めて鋭い洞察力、直感力で予想したと言われています。

2)数の幾何

\(π(x)\)は素数の個数を数える関数ですが、数を数えることであれば、色々な場合を考えることができます。
たとえば、\(N(r)\)=#\(((m,n)\in \mathbb{ Z }^2 l m^2+n^2<r^2)\)は、半径\(r\)の円の中にある格子点の数です。#は個数を表す記号です。
ここで、\(r→∞\)のとき、\(N(r)=πr^2+O(r)\) \(O(r)\)はランダウの記号(ビッグオー)といいます。円内の格子点の数は、大体円の面積に等しく、その誤差は\(r\)のオーダーであるということを意味しています。

3)楕円曲線(elliptic curve)

\(a,b\in \mathbb{ Q }\)とし、\(E:y^2=x^3+ax+b\)とします。\(x,y\)を有理数倍の変数変換して、\(a,b \in \mathbb{ Z }\)とすることができ、各素数\(p\)について、\(a\)が\(p^4\)の倍数であれば、\(b\)が\(p^6\)の倍数でないようにできます。このときに、\(Δ_E=-(4a^3+27b^2)\)を\(E\)の判別式といいます。ここで、\(Δ_E≠0\)のとき、\(E\)を\(\mathbb{ Q }\)上の楕円曲線と定義します。楕円曲線は、バルガヴァの先生であるワイルズがフェルマーの最終定理を証明したときに楕円曲線に関する谷山・志村予想を証明することによって解決したことでも有名です。バルガヴァはワイルズの見識を受け継いでいるといえるでしょう。関連した整数論のなかに、階数\(r(E)\)とゼータ関数\(L(s,E)\)があります。\(L(s,E)\)は有限体上で\(E\)の解の個数のもとに定めるオイラー積となります。先の谷山・志村予想は、\(L(s,E)\)は保型形式から定まる\(L\)関数に一致すると言うものでした。ワイルズの成果を学んだバルガヴァは、\(E\)が全体として示す法則を考察しました。

4)セルマー群の平均位数

\(E\)に応じて定まる整数論的データに、\(n-\)セルマー群があります。\(Sel_n(E) (n=1,2,3,・・・・・・・)\) バルガヴァはプリンストンの学生のシャンカーとの共同研究で、バガルヴァーシャンカーの定理を証明しています。これは、\(\mathbb{ Z }\)で定義された代数群\(\mathbb{G}\)とその有限次元表現\(V\)の対\((C,V)\)をうまくとり、{数えたいもの}\(→G_Z\) \ \(V_Z\)を構成し、数の幾何で数える、と言うことになります。

これ以外にも、様々な業績を上げていますが、「バルガヴァの研究は、整数論的な群の表現の深い理解と、代数学と解析学の専門的な技法の類まれなる融合の双方に基づいている。」と評価されています。

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