特殊相対性理論とミンコフスキー空間-特殊相対論の空間論-
特殊相対性理論
特殊相対性理論は、1905年に当時スイスのベルンの特許局にいたアインシュタインによって発表された理論です。アインシュタインは、1922年にノーベル物理学賞を受賞していますが、このときの対象は、相対性理論ではなく、光電効果、ブラウン運動などの功績によってであって、相対性理論は含まれてはいません。相対論が、時代を先んじていて、まだその実験的な実証がなされていなかったためです。
後にアインシュタインは、重力も含めた一般相対性理論も発表しますが、第1次世界大戦中の皆既日食があったときに、停戦し、アインシュタインが相対論で予想していた光の赤方偏移の測定がなされ、予想とほぼ一致したために、相対論の実験的実証が成され、アインシュタインの名声は極めて高いものとなりました。
特殊相対性理論の空間論の数学的定式化
ミンコフスキーは、ロシア生まれの数学者です。ケーニヒスベルグ大、チューリッヒ大、ゲッティンゲン大などで、教授を歴任し、ゲッティンゲンでは、天才ヒルベルトと親交を結んでいます。当初整数係数の代数方程式を解くディオファントス方程式を研究していました。
アインシュタインが、特殊相対性理論を発表したとき、ゲッティンゲン大のアインシュタインの先生であったミンコフスキーが特殊相対論の見事な幾何学的空間論を構築しました。
アインシュタインの理論は、
1)互いに1直線上を一定速度で進む慣性系においては、物理法則は同一である。
2)互いに1直線状を一定速度で,並進運動している慣性系においては、光は常に一定の速度\(c\)で進む。(光速不変の原理です。)
これから、\(t=0\) のときに一致しており、x軸方向に相対速度\(v\)で並進運動している2つの慣性系 \(K(x,y,z,t)、K'(x’,y’z’,t’)\) の間には、有名な関係式
\(x’=(x-vt)\)/\(\sqrt{1-(v/c)^2}\)、\(y’=y、z’=z\)、\(t’=(t-(v/c)^2)\)/\(\sqrt{1-(v/c)^2}\) が導かれます。これが良く知られたローレンツ変換です。
ミンコフスキーは、このローレンツ変換が、
\(x^2+y^2+z^2-c^2t^2=x’^2+y’^2+z’^2-c^2t’^2\)を満たす\((x,y,z,t)と(x’,y’,z’,t’)\) の同次1次変換である事に注目し、座標が\((x,y,z,t)\)の4次元で,計量が、\(x^2+y^2+z^2-c^2t^2\)である空間を構成することに成功しました。これは、ミンコフスキー空間と言われています。
また、後にアインシュタインは、特殊相対論を拡張した重力を加味した一般相対性理論を展開したときには、彼は、当初は簡単な数学で表現できると考えていましたが、ミンコフスキー空間をもとに、4次元リーマン空間を使うことになるのです。これは、テンソル解析を用いた決して簡単ではない難しい数学だったのです。