対称式と交代式-式計算の基本-
対称式について
式計算の工夫については、以前説明をしましたが、その基本的なものについて書いておきます。式変形をするときに、文字に関して対称的なものと、文字の入れ替えにより、式の符号がかわる交代式があります。このような式は、計算のやり方のによって計算スピードがかなり違ってきますので、式変形のやり方をマスターする必要があるとおもいます。
対称式は、文字を入れ替えたときに式が変わらないものをいいます。例えば、3文字で言うと、\(x+y+z\)、\(x^2+y^2+z^2\)、\(xy+yz+zx\) などは対象式です。一般に\(x,y,z\)の整式をf(x,y,z)とおくとき、\(f(y,x,z)=f(x,y,z)\) になるようなものが、対称式です。
そして対称式は、3文字の場合、基本対称式、\(x+y+z, xy+yz+zx, xyz \)で表す事ができます。例えば、\(x^2+y^2+z^2\)=\((x+y+z)^2-2(xy+yz+zx)\)となるのはご承知のとおりです。
交代式について
交代式は、f(y,x,z)=-f(x,y,z) になるものです。例をあげると、
\(a^2(b-c)+b^2(c-a)+c^2(a-b)\) はaとbを代えると符号がかわります。そして、交代式は、\((a-b)(b-c)(c-a)\)を因数に必ず持ちますから、因数分解するときなどには、とても役に立ちますから覚えておいておくほうがいいと思います。
\(a^2(b-c)+b^2(c-a)+c^2(a-b)\)の因数分解は、ほとんど暗算でできます。与式は、文字に対して3次しきですから、\(a^2(b-c)+b^2(c-a)+c^2(a-b)\)=
\(k(a-b)(b-c)(c-a) (kは定数\))とかけます。\(a^2b\)の両辺の係数を考えると、1=-kとなりますので、\(a^2(b-c)+b^2(c-a)+c^2(a-b)\)
=\(-(a-b)(b-c)(c-a)\) と直ちに因数分解できます。
対称式の扱い方
場合によっては、対称性を保ったまま計算するほうが、計算しやすいと思います。場合によっては、対称性をくずす方がよい時もありますが、対称的で綺麗なものは、そのままでやったほうがいい場合がかなり多いと思います。
対称式の問題例1
相異なる実数\(x,y,z\)が
\(x+y+z=6・・・・・① xy+yz+zx=-9・・・・・・②\) の時に\(w=xyz\)の値の範囲を求めてください。
解1対称性を保つ方法
\(①、②、およびwから、実数x,y,z\)は、tの3次関数\(t^3-6t^2+9t-w=0\)の実数解となります。従って
\(f(x)=t^3-6t^2+9t=w\)・・・・・・・③ となりますから、\(y=f(x)\)のグラフを微分を使って書き、グラフを考察すると、③が3実数解を持つのは、\(0<w<4\) であることがわかります。これが答えです。
対称的な式の問題例2
\(x,y,z\)を正の実数とします。このとき
\(A=(x/(x+y)+y/(y+z)+z/(z+x)\) とします。このとき
(1)\(1<A<2\)である事を示してください。
(2)\(A=3/2\)となる時の\(x,y,z\)の条件を求めてください。
対称性を保つ解法例
(1)\(B\)=\(y/(x+y)\)+\(z/(y+z)\)+\(x/(z+x)\) とおきます。ここで、
\(A+B\)=\((x+y)/(x+y)\)+\((y+z)/(y+z)\)+\((y+x)/(z+x)\)=3です。
\(A\)>\(x/(x+y+z)\)+\(y/(x+y+z)\)+\(z/(x+y+z)\)=1ですから、同様に\(B>1 もいえますから、1<A=3-B=2となりますから、1<A<2\)です。
(2)\(A=1/(1+y/x)+1/(1+z/y)+1/(1+x/z)\) ですから、
\(X=y/x, Y=z/y, Z=x/z とおくと、XYZ=1,X,Y,Z>0\)のときに
\(A=1/(1+X)+1/(1+Y)+1/(1+Z)=3/2\)・・・・・・①となる時の、\(X,Y,Z\)の条件を求めればいい事になります。①式を整理し、\(XYZ=1\)を使うと、
\(XYZ-1-(XY+YZ+ZX)+(X+Y+Z)=0\)となりますから、これより、
\((X-1)(Y-1)(Z-1)=0\) となります。従って、\(X=1 or Y=1 or Z=1\) となります。従って、\(x=yまたはy=zまたはz=x\) となります。
(注)問題例1も2も対称性をくずして計算しても解く事はできますが、計算が、かなり面倒となります。対称性のあるものは、対称性を保って解く事を考えると、計算量も解く時間も短くなると思います。