線形代数学-大学で学ぶ代数学-
行列や行列式について
旧課程では、数Cに2行2列の行列を学んでいましたが、新課程から行列は外され、その代わりに複素平面(ガウス平面)が高校の課程に入ってきました。ただ、数Cで学んだ行列は、2行2列のごく単純なものに過ぎず少し中途半端なものとなっていました。行列Aを
(a b)
(c d)
のようなものだけを扱っていました。このような(2、2)の行列では、ケーリー・ハミルトンの定理があって、
A^2-(a+b)A+(ad-bc)E=0 が成り立ちました。
A^2は、AAの積ですが、一般にAB=BAの交換法則が成り立つとは限りません。Eは単位行列で、対角成分が1、他は0です。また、Oは零行列で、全ての成分が0になっているものです。
ケーリー・ハミルトンは、A^nを計算する時に便利な定理です。
一般的な行列
大学で学ぶ線形代数学では、m行、n列の行列を扱います。特にn=1やm=1のものは、それぞれ、列ベクトル、行ベクトルと言います。また、行列に対して、スカラー倍、転置行列、複素共役行列なども重要な概念となります。固有値や固有ベクトルなども学んでいきます。さらに線形代数は、微分積分が加わると、ベクトル解析や、テンソル解析などの解析学にも発展していきます。
連立1次方程式の解法-クラメールの方法-
線形代数学で基本的な問題ですし、重要な問題でもあります。
n個の未知数、x1、x2、・・・・・・、xnに対して、m個の方程式があるとします。
a11x1+a12x2+・・・・・・・・・+a1n=b1
a21x1+a22x2+・・・・・・・・+a2n=b2
am1x1+am2x2+・・・・・・・・+amn=bm
ここで、aij、bkは複素数とします。
係数の行列をA、未知数の列ベクトルを、x、右辺の定数の列ベクトルをbとすれば、Ax=b・・・・・・・・・・(2)と書くことが出来ます。この解法は、行列Aの逆行列が存在するとすれば、x=A^(-1)b となります。Aの逆行列を求めるのに、行列式を使います。
ベクトル空間と線形写像
ベクトル空間とは、①スカラー倍が存在する②ベクトルの和はベクトルである。③2つのベクトルに内積と言う演算を定めることができる。①②をあわせたものがベクトル空間であり、③も合わせると計量ベクトル空間といいます。
大学では、さらに行列の標準化、直行化、ユニタリー行列なども学びます。線形代数は、学べば学ぶほどどんどん抽象化しますので、基礎的な部分をまずはマスターすることが重要だと思います。