2015年ノーベル賞について思うこと-東大130周年記念式典での印象-

2015年ノーベル賞受賞

2015年は、医学生理学賞を大村北里大特別栄誉教授、物理学賞を梶田東京大学教授が受賞されました。日本にとっても大変名誉なことで、これをきっかけにさらに基礎科学の分野を目指す若者が増えることを望んでいます。文学賞については、2015年は、呼び声が高かった村上春樹さんの受賞にはなりませんでしたが、来年はどうなるのでしょうか。

ノーベル賞といえば、筆者の記憶にあるのは、2007年に東京大学130周年記念式典が安田講堂であって、そこで、ノーベル賞受賞者の江崎玲於奈博士(物理学賞)、大江健三郎さん(文学賞)、小柴東大特別栄誉教授(物理学賞)の3名のパネルディスカッションを聞く機会がありました。とても印象的なことでしたので、ここに書き留めておきます。

2007年の3名ノーベル賞受賞者のパネルディスカションについて

2007年のパネルディスカッションは、実際のノーベル賞受賞者から生の声とお話をお聞きすることができて、とても有意義な時間を過ごすことができました。また、理系の大学院大学である東大柏キャンパスでは、毎年11月にキャンパス内を一般公開しており、研究の現場を見ることができるとともに、メディア図書館で講演会も企画されます。

2007年のパネルディスカッションですが、このサイトは理系のサイトですので、江崎博士のお話や小柴特別栄誉教授のお話が中心となります。江崎博士は、トンネル効果を利用した江崎ダイオードを発明された方です。小柴東大特別栄誉教授は、東京大学宇宙線研究所の付属神岡宇宙素粒子研究施設でニュートリノを世界ではじめてみつけられました。

江崎先生のお話

江崎先生のお話で特に印象に残っているのは、物理学や化学や数学などのサイエンスは心がないとできない、言われたことでした。科学の心とは、日本語で言うと説明しにくくて英語で説明するとよく理解できるといわれたことでした。日本語でこころといいますが、英語では、spirit、heart,mindなど色々な言い方をします。日本ではやまとごころなどと言いますが、これは、美観と心情であって、heart だと言われました。一方サイエンスでもこころがいるのですが、これは、science mind であると言われていました。確かにそうで、サイエンスをやるには強い意志とマインドが必要です。夏目漱石の名著に「こころ」がありますが、ラフカディオ・ハーンは、これを”The heart of thing” と訳すべきと言っており、決してmindではないのだと仰っておられました。mindこそサイエンスに必須のものだと仰っておりました。

小柴先生のお話

小柴先生のお話では、物理などの科学をする心構えを話されたと思います。小柴先生は自分は、東大の物理学科では劣等生だったと仰っておりました。小柴先生の学生時代の成績表が残っていて、本にも載せたのだそうです。Dの多い劣等生だとはっきり仰いました。こんな自分でもノーベル賞が取れたのは、自分が人のやらないことをやったからではないかと言われておりました。カミオカンデを岐阜県神岡町に作ったときも、国は予算を余り出してくれない、同時期にアメリカで同じような計画があって予算が10倍くらいあった。文科省は予算を出してくれない。じゃあどうするかを本当に真剣に考えたそうです。それからの話は結構有名なので、ご存知の方も多いとは思いますが、光電子倍増管の感度を10倍にすればいいとH社の社長を説得し、東大との共同開発にこぎつけたのだそうです。やはり大事なのは、何かをやり遂げようと言う強い意志とmindであろうと思います。

民主党政権のとき、予算仕分けでスパコンを世界一にしようと言うプロジェクトがあったとき、ある女性大臣は、「2番じゃあだめなんですか。どうして1番じゃあないとだめなんですか?」と言った方がおられましたが、「そうです、1番じゃあないとだめなんです。」

Follow me!