3角比の問題 -3角比は、どんな数なのか。解答編-


3角比の問題

「tan 1 ° は、有理数か、無理数か」・・・・・ (1)  (京都大学)

この問題の解答を書いておきます。もっとも短い入試問題と言われています。(1)をみて、どういう解答を思いつくかなのですが、\(1°=π/180 rad\) ですから、radで考えようとする人もいるかもしれません。また、図を書いて解こうとする人もいるかもしれません。でも、どうも、\(tan1°\) は無理数らしいと予想出来ます。

ある数が、無理数なのかどうかを証明する時には、よく背理法を使います。例えば \(sqrt{2}\) は無理数ですが、これも有理数だと仮定して、矛盾を導き背理法で証明します。

では、どうやって論理構成をするのか

多分背理法を使うのだろうと予測をたてて、考えて見ます。と言うことは、tan1°は、有理数だと仮定して何らかの矛盾を導けばいいのだろうと、考えます。ではどうやって矛盾を導くのか。これがこの問題を解く鍵になります。

解決の糸口

3角比、3角関数には、加法定理があります。これを思いつくかどうかが正解にたどり着くかどうかのキーポイントです。

tanの加法定理は、α、βにたいして、\(tan(α+β)=(tanα+tanβ)/(1-tanα・tanβ)\)・・・・② であらわされることは基本的です。この加法定理を使って何とか矛盾を導けばいい事になります。②は、αとβの足し算ですから、1°から、2°が導けます。こうして次々に1°ずつ角度が大きくなることになります。

数学的帰納法を使えばいいのだろうという思いつき

解決の糸口から、数学的帰納法を用いればよいと思いつけば、もう解答はかけると思います。加法定理を使って、1°から、2°、3°、4°と順に角度を1°ずつ上げていき、無理数であるところまでもっていけばいいと考えます。

そこで思いつくのは、特殊角のtan30°でこれは、\(1/\sqrt{3}=\sqrt{3}/3\) で無理数です。そこでそこまで行き着けばいい事になります。√3/3が無理数であることも言わなければならないとしたら、これも背理法で容易に証明できます。

\(tan1°\)が無理数であることの証明

\(tan1°=\)有理数であると仮定します。②式から、\(α=1°、β=1°\)とすれば、\(tan2°=\){有理数+有理数}/{1-有理数・有理数}=有理数となります。これを繰り返すと、\(tan30°=tan(29°+1°)=tan30°=\)有理数となってしまいます。ところが、\(tan30°=\sqrt{3}/3=\)無理数ですから、これは矛盾です。従って、\(tan1°\) は有理数ではなく、無理数であることになります。

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