連立方程式の解-線形代数学の初歩・クラメールの公式-
1次連立方程式の解
旧課程では、数Cで行列(2行、2列)をやっていましたので、少しは理解しやすいと思いますが、現過程では、行列は高校ではやらず、大学の線形代数学でやることになっています。(2,2)の行列は余りにも特殊で、あえて数Cでやる意味があるのかどうか疑問には思っていましたが、以前の履修状況になりました。線形代数を体系的に学ぶには、この方が好ましいと思っています。
2元1次連立方程式は、以下のような連立した方程式を解くことになります。
\(ax+by=e\)
\(cx+dy=f\)
この解法は中学で学びますし、容易です。これを行列、列ベクトルで書くと
\(\begin{pmatrix} a & b \\ c & d \end{pmatrix}\left(
\begin{array}{c}x \\y \\ \end{array}\right)\)=\(\left(\begin{array}{c}e \\f \\ \end{array}\right)\) となります。
上の2元1次連立方程式を解くのは容易だと思います。
1次連立方程式の一般化
数学では、特殊なものから一般的なものを考えていくのが慣例です。一般式を導くのが重要になってきます。連立n元1次方程式では、次のようになります。
\(a_{11}・x_1+a_{12}・x_2+・・・・・・・・・・・・・+a_{1n}・x_n=y1\)
\(a_{21}・x_1+a_{22}・x_2+・・・・・・・・・・・・・+a_{2n}・x_n=y2\)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
\(a_{n1}・x_1+a_{n2}・x_2+・・・・・・・・・・・・・+a_{nn}・x_n=y_n\)
となります。\(a_{ij}、y_i\)は定数、でx_i(i,j=1,2,3,・・・・・・n)は独立変数で、
\(x_i\)を求めることになります。
行列式で表したn元連立1次方程式
上の連立方程式を書くのは、繁雑ですから、行列と列ベクトルを使います。
\(A\)=\(\begin{eqnarray}
\left(
\begin{array}{cccc}
a_{ 11 } & a_{ 12 } & \ldots & a_{ 1n } \\
a_{ 21 } & a_{ 22 } & \ldots & a_{ 2n } \\
\vdots & \vdots & \ddots & \vdots \\
a_{ n1 } & a_{ n2 } & \ldots & a_{ nn }
\end{array}
\right)
\end{eqnarray}\)
x=\(\left( \begin{array}{c} x_1 \\ x_2 \\ \vdots \\ x_n \end{array} \right)\), y=\(\left( \begin{array}{c} y_1 \\ y_2 \\ \vdots \\ y_n \end{array} \right)\) とおけば、連立方程式は、
Ax=y・・・・・・・①
という簡単な式で表すことができます。すこし具体的に書くと、
\(\begin{eqnarray}
\left(
\begin{array}{cccc}
a_{ 11 } & a_{ 12 } & \ldots & a_{ 1n } \\
a_{ 21 } & a_{ 22 } & \ldots & a_{ 2n } \\
\vdots & \vdots & \ddots & \vdots \\
a_{ n1 } & a_{ n2 } & \ldots & a_{ nn }
\end{array}\right)\end{eqnarray}\)・\(\left( \begin{array}{c} x_1 \\ x_2 \\ \vdots \\ x_n \end{array} \right)\)=\(\left( \begin{array}{c} y_1 \\ y_2 \\ \vdots \\ y_n \end{array} \right)\)
となります。
①の関係式は、行列Aが、逆行列 \(A^{-1}\)を持てば、①式の両辺に\(A^{-1}\)
をかければ、\(A^{-1}・A・x\)=\(A^{-1}・y\) となり、
\(x=A^{-1}y\) となります。\(A^{-1}\)は、Aの行列式が0でない場合、すなわち、\(\mathrm{ det }A\)≠0ならば、求めることができます。
3元連立1次方程式の例
\(a_1・x+b_1・y+c_1・z=p\)
\(a_2・x+b_2・y+c_2・z=q\)
\(a_3・x+b_3・y+c_3・z=r\)
の連立方程式の解は、
A=\(\begin{eqnarray}
\left(
\begin{array}{ccc}
a_1 & b_1 & c_1 \\
a_2 & b_2& c_2 \\
a_3& b_3& c_3
\end{array}
\right)
\end{eqnarray}\) とおき、
\(X=\left(
\begin{array}{c}
x \\
y\\
z
\end{array}
\right)\) ,\(P=\left( \begin{array}{c} p \\ q\\ r \end{array}
\right)\)
とおけば、\(AX=P\) となりますから、\(X=A^{-1}・P\)となり、
\(x\)=\(\begin{eqnarray}
\mathrm{det}
\begin{vmatrix} p & b_1&c_1 \\ q& b_2&c_2\\r&b_3&c_3 \end{vmatrix}
\end{eqnarray}\)/\(\begin{eqnarray}\mathrm{det}
\begin{vmatrix} a_1 & b_1&c_1 \\ a_2& b_2&c_2\\a_3&b_3&c_3 \end{vmatrix}
\end{eqnarray}\)
などとなります。ただし、\(detA≠0\)の場合です。
このようにすれば、n次元の連立1次方程式も公式化して解くことができます。