試験によく出る大学数学-その2-

試験によくでる大学数学

難関大の入試問題には、大学の教養課程などの項目を少し易しくしたり、誘導をつけたりして受験生に解かせる問題が出題される場合があります。入試数学によく出る大学数学についてまとめておきましょう。高校数学では学習していませんので入試問題では、説明がついたり誘導がついたりするのが普通です。入試問題は、解かなくてはいけませんので、大学数学の入門部程度は、学んでおいたほうが有利であるのは間違いありません。

入試によくでる大学教養数学の項目

数学の入試問題によく出る大学数学は、次のものがあると思います。

(1)微積分学:テーラー展開、マクローリン展開: 次のリンクを参照してください。試験によく出る大学数学-その1-

(2)統計学、統計力学:誤差積分(Error function)

(3)ベクトル解析

(4)常微分方程式

今回の講義テーマ

第1回でテーラー展開、マクローリン展開について説明いたしましたので、今回は、統計学や統計力学などで重要な誤差関数(error function) についてお話しましょう。誤差関数は正規分布のグラフの定式化等に重要な関数です。誤差関数は、既に多変数関数の積分の項目で説明はしていますが、確率分布関数として重要ですから、まず確率分布についての説明をしておきましょう。

確率分布について

一般に、変量\(X\)のとる値が、\(x_1,x_2,・・・・・・・・・,x_n\)であり、これらの値をとる確率が、\(p_1,p_2,・・・・・・・・・,p_n\)のとき、
これらの\(x_1,x_2,・・・・・・・・・,x_n\)と\(p_1,p_2,・・・・・・・・・,p_n\)との対応関係を、変量\(X\)の確率分布といい、\(X\)を確率変数と言います。
\(p_i\)を、\(P(X=x_i)\)と表します。当然ですが、\(p_1+p_2+・・・・・・・・・+p_n=1\)が成り立つことは、重要です。

平均と分散

変量\(X\)の平均\(m\)と分散\(σ^2\)を次のように定義します。

\(m=E(X)=\displaystyle \sum_{ i = 1 }^{ n } X_i・p_i\)
\(σ^2=\displaystyle \sum_{ i = 1 }^{ n } (x_i-m)^2p_i\)

このもとに、代表的な確率分布をあげておきましょう。

1)2項分布

\(P(X=i)={}_n \mathrm{ C }_ip^iq^{n-i}\)に従う確率分布を、2項分布といいます。
このとき、ある事象の起こる回数の平均とその分散を求めてみましょう。

\(m=\displaystyle \sum_{ i =0 }^{ n } iP_i=\displaystyle \sum_{ i =0 }^{ n } {}_n \mathrm{ C }_ip^iq^{n-i}\)
=\(np(q^{n-1}+{}_{n-1} \mathrm{ C }_1pq^{n-1-1}+・・・・・・・+p^{n-1})\)
=\(np(q+p)^{n-1}=np\)

\(σ^2=\displaystyle \sum_{ i =0 }^{ n } {}_n \mathrm{ C }_i(x_i-m)^2P_i\)
=\(\displaystyle \sum_{ i =0 }^{ n } {}_n \mathrm{ C }_ix_i^2P_i-2m\displaystyle \sum_{ i =0 }^{ n } {}_n \mathrm{ C }_ixiP_i+m^2\displaystyle \sum_{ i =0 }^{ n } {}_n \mathrm{ C }_iP_i\)
\(m=np\)を用いると、\(σ^2=np(1-p)=npq\)、よって、\(σ=\sqrt{npq}\)

2)正規分布

本稿の主題は正規分布です。理論上も実用上も最も重要な連続確率分布は、正規分布です。正規分布に、誤差関数と言う有名な積分がでてきます。この積分は通常の積分では求めることが出来ません。2変数関数の積分、変数変換等が必要となります。

連続変量\(X\)の確率密度関数\(f(x)\)が、
\(f(x)=1/(\sqrt{2π}σ)・exp(-(x-m)^2/2σ^2)\)・・・・・・・①であるとき、\(X\)は正規分布に従って分布するといいます。

簡単な考察から、\(\displaystyle \lim_{ x \to \infty }  f(x)=0\)、\(x→-∞でもf(x)→0\)です。
また、\(x=m\)で極大、\(x=m±σ\)で変曲点となります。
さらに、
\(\displaystyle \int_{ – \infty }^{ \infty }1/(\sqrt{2π}σ)・exp(-(x-m)^2/2σ^2) dx=1\)となります。
これは、\(z=(x-m)/σ\)に変数変換すると、

\(\displaystyle \int_{ – \infty }^{ \infty }1/(\sqrt{2π}σ)・exp(-(x-m)^2/2σ^2) dx\)
=\(\displaystyle \int_{ – \infty }^{ \infty }1/(\sqrt{2π}σ)・exp(-z^2/2)σ dz\)
=\(\displaystyle \int_{ – \infty }^{ \infty }1/\sqrt{2π}・exp(-z^2/2) dz\)

ここで、\(\displaystyle \int_{ – \infty }^{ \infty }1/\sqrt{2π}・exp(-z^2/2) dz=\sqrt{2π}\)・・・・・・・②という有名な積分がえられますが、
この積分が、正規分布に重要なものなのです。

この積分は通常の積分法では求めることができませんが、②式の結果は正規分布を考えるときに基本的なものであり結果を知っておくとともに、導出法も理解しておくとよいと思います。通常2重積分をを使います。既に説明はしていますが、正規分布に使われている重要な積分ですから、説明しておきましょう。

領域\(A\)を\(A={(x,y)l0≦x≦R、0≦y≦R}\)とする正方形とします。また、\(C={(x,y)lx^2+y^2≦R^2}\)とする半円を考えます。さらに、もう1つの半円  \(C’={(x,y)lx^2+y^2≦2R^2}\)を考えます。

\(\iint_A   exp(-x^2-y^2)dxdy=(\displaystyle \int_{0}^{R}e^{-x^2}dx)^2\)・・・・・・・・・・・①

各領域の面積を考えると次の不等式が成り立ちます。
\(\iint_C exp(-x^2-y^2) dxdy<\iint_A   exp(-x^2-y^2)dxdy<\iint_C’ exp(-x^2-y^2) dxdy\)・・・・・・・・・②

②の左辺と右辺の積分は、\((x,y)\)直交座標から\((r,θ)\)極座標に座標変換すると、\(dxdy=rdrdθ\)になることを考慮して、

\(\iint_C exp(-x^2-y^2) dxdy=\iint_C exp(-r^2r・drdθ)=\displaystyle \int_{0}^{R} rexp(-r^2)dr・\displaystyle \int_{0}^{π/2}dθ\)
=\(π/4(1-e^{-R^2})\) となりますから、右辺も同様にして、②式は、

\(π/4(1-e^{-R^2})<\displaystyle \int_{0}^{R}e^{-x^2}dx)^2<π/4(1-e^{-2R^2})\)・・・・・・・・③
となります。
③式で、\(R→∞\)とすると、挟み撃ちの原理から、
\((\displaystyle \int_{0}^{ \infty }e^{-x^2} dx)^2=π/4\)ですから、

\(\displaystyle \int_{0}^{ \infty }e^{-x^2} dx=\sqrt{π}/2\)となります。\(e^{-x^2}\)は\(y\)軸に関して対称ですから、

\(\displaystyle \int_{-\infty}^{ \infty }e^{-x^2} dx=\sqrt{π}\)です。この積分が正規分布の基本となるものです。

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