解析関数-Cauchy・Riemannの微分方程式
独立変数、従属変数が複素数の時の微積分
高校までの段階では、微分積分を考えるときは、変数はすべて実数の範囲で考えます。微分積分は、実数から複素数への拡張が考えられます。このように独立変数、従属変数が複素数である場合での微積分の性質を調べるのが、複素関数論です。独立変数をz、従属変数をwとし、z=x+iy、 w=u+ivとします。x、y、u,vは実数です。w=f(z)=u+ivここで、u,vはx、yの関数ではありますが、どんな関数でもいい訳ではありません。w=f(z)が解析的であるには、ある条件を満たさなければなりません。複素数の微積分は大学で学ぶものですが、実数から複素数への拡張は、容易な考え方ですから、知っておいてもいいのではないかと思います。
複素関数論での基本的な式
考え方としては、Δzの変化に対するΔwの変化の割合、すなわちΔw/Δzが、極限値を持つと言う条件をつけるのは、実数関数の微積分と同様です。Δw/Δz=Δf(z)/Δz={Δ(u+iv)/{Δx+Δy}がΔx、Δyの比に無関係な極限値を持つことが、必要十分条件となります。すなわち
lim(Δx→0)[{(u(x+Δx)、y)+i(v(x+Δx,y)}/Δx-{u(x+Δx,y)+iv(x,y)}/Δx
=lim(Δy→0)[{(u(x、y+Δy)+i(v(x,y+Δy)}/Δx-{u(x,y)+iv(x,y)}/iΔy
従って、∂u/∂x+i∂v/∂x=∂v/∂y-i∂u/∂y・・・・・・①
が成り立つことになります。u、v、∂u/∂x、∂u/∂yは実数ですから、①から、
∂u/∂x=∂v/∂y、∂v/∂x=-∂u/∂y・・・・・・・②
が成り立つことになります。②をCauchy-Riemannの微分方程式といいます。逆に②が成り立つなら、Δx、Δyにかかわらず、
lim(Δz→0){f(z+Δz)-f(z)}/Δz=f’(z)が存在することが示せます。少し計算は面倒にはなります。
解析関数について
複素平面上のある領域で、Cauchy-Riemannの微分方程式が成り立つような関数f(z)を解析関数と言います。(analytic function) と言います。1 価の解析関数で、Cauchey-Riemannが成り立つような点z、すなわち微分可能な点を、正則点(regular point)、正則で無い点(微分係数の存在しない点を)を特異点(singular point)と言います。
f(z)が正則であれば、f’(z)も正則である事を示すことが出来ます。従って、f(z)は何階でも微分可能と言う事になります。正則であれば、②式のCauchey-Riemannが成り立ちますから、
∂^2u/∂x^2=∂v^2/∂x∂y、∂^2v/∂y^2=-∂u^2/∂x∂yが成り立ちますから、下記の式が成り立つことになります。
∂^2u/∂x^2+∂^2u/∂y^2=0・・・・・・・・③
∂^2v/∂x^2+∂^2v/∂y^2=0・・・・・・・・④
③、④をLaplaceの微分方程式といい,u、vは調和関数とも言います。このように、解析関数f(z)の実部u(x,y)、v(x,y)は、x、yの関数としては極めて特殊な関数であるといえるのです。