精選問題集その1-解答編-
数学精選問題
数学の問題には、リーマン予想のような今でも未解決の問題や、入試問題のように既に誰かが解いてしまった問題とに大別されます。ですが、私たちの扱う数学の問題は、ほとんど後者に属します。それでは、既に解かれてしまった数学の問題を解く意味は何なのでしょうか。教科書の例題などは、ある公式や定理を学んだあとに、数学的な意味を問うよりも色々な面で「慣れる」事が第一義であると思われます。また、具体例を考えることによって、その理論をより自分のものにするという意味合いがあると思われます。
さらにある理論について一通りの勉強をすると、次に総合的な演習問題をじっくり学習することが大切になってきます。またこのような学習が、基礎事項の理解を深めることにも役立ちます。
問題自身やその解法に興味深いものがあるのも事実ですが、演習問題を解くために基礎事項があるのではなく、数学そのものを理解するために演習問題があるのだと思います。ここの精選問題は、そういう問題です。数ⅠAの範囲です。
精選問題
【問題1】
\(f(x)\)は4次の整式で、\((x-2)^2\)で割った余りは\(1\)、\((x-1)^2\)で割った余りは、\(-1\)とします。\(f(x)\)を求めてください。
【解答1】
\(f(x)\)をどうおくかで、スピードが違います。
第1の条件より\(f(x)=a(x-2)^4+b(X-2)^2+1\)と置けます。
第2の条件より、\(f(1)=-1\)ですから、 \(a-b+1=-1\) よって、\(b=a+1\)だから、
\(f(x)=a(x-2)^4+(a+2)(x-2)^2+1\)
=\(a(x-2)^3{(x-2)+1}+2{(x-2)^3+1}-1\)
\({}\)の中が、\(x-1\)で割り切れるから、\(a=6\)
従って、\(f(x)=6(x-2)^4+8(x-2)^2+1\)
これは、\(f(x)=6x^4-40x^3+96x^2-96x+33\)
【問題2】
方程式\(x^n+ax^2+b=0 b≠0\)の解の\(k\)乗の和を、\(t_k\)とします。
\(t_{n-1},t_{n+1}、t_{2n-1}\)の値を求めてください。
ただし、\(n\)は5より大きい整数とします。
【解答2】
\(n\)個の解を\(α_1,α_2,・・・・・・・・,α_n\)とすると、
\(α_i^n+aα_i+b=0、(i=1,2、・・・・・n)\)
\(b≠0\)より、\(α_i≠0\)より、
\(α_i^{n+m}+aα_i^{2+m}+bα_i^m=0\)
よって、これらの\(n\)この式を辺ごとに足すと、
\(t_{n+m}+at_{2+m}+bt_m=0\)
これに、\(m=-1、1、n-1\)とおくと
\(t_{n-1}+at_1+bt_{-1}=0\)
\(t_{n+1}+at_3+bt_1=0\)
\(t_{n-1}+at_{n+1}+bt_{n-1}=0\)
\(n>5\)から、与えられた方程式の、\(x^{n-1}、x^{n-2}、x^{n-3}\)の係数は \(0\)であり、
解と係数の関係から少しの計算をすることより、
\(t_{-1}=t_1=t_3=0\)
よって、\(t_{n-1}=t_{n+1}=t_{2n-1}=0\)
【問題3】
\(a,b\)を実数とする命題、
「どんな実数\(y,z\)に対しても、適当な実数\(x\)をとれば、\(abx+ay+bz≠0\)となる」
が成り立たないための条件を求めてください。
【解答2】
命題における、「どんな」と「適当な」と言う意味をよく考えましょう。
この命題が成り立たないと言うことは、
「ある実数\(y,z\)に対して、どんな\(x\)をとっても、
\(abx+ay+c=0\)
が成り立つ」ことと同値です。
よって、どんな\(x\)でも上式が成り立つのは、
\(ab=0\) \(ay+bz=0\)
これから、\(a=0\)なら、\(bz=0\)から、\(z=0\)とすればよいことになります。
また、\(b=0\)なら、\(ay=0\)から、\(y=0\)とすればよいです。
従って、求める条件は、\(a=0またはb=0\)
【問題4】
任意の正の数\(a,b\)に対して、常に
\(k・\sqrt{ab}≦(a^2+b^2)/(a+b)\)
が成り立つような、実数\(k\)の最大値を求めてください。
【解答4】
相乗・相加平均の関係を使うことを考えます。
与えられた式は、\(k≦(a^2+b^2)/\sqrt{ab}(a+b)\)と同値で、
さらに、\(k≦(a^2+b^2)/\sqrt{ab}(a+b)=(a+b)/\sqrt{ab}-2\sqrt{ab}/(a+b)\)
ここで、\((a+b)/2\sqrt{ab}≧2,\sqrt{ab}/(a+b)≦1/2\) だから、
\((a+b)/\sqrt{ab}-2\sqrt{ab}/(a+b)≧1\) 等号は、\(a=b\)で成り立ちます。
したがって、\(k\)の最大値は、\(1\)となります。
【問題5】
\(a,b,c\)は実数とし、3次方程式\(x^3+ax^2+bx+c=0\) は3つの実数解をもつものとします。
\(\vert b\vert=\vert c \vert\) であるならば、この3次方程式は、その絶対値が3以下の解を少なくとも1つ持つことを示してください。
【解答5】
絶対値が\(3\)以下の解が少なくとも1つ存在することを、直接示すことは、かなり難しいと思います。では、どうするか。この否定をとり、全ての解が3より大きいとするとどうなるか、に着目すると解きやすいと思います。つまり背理法です。これがヒントです。