直交関数と3角関数-問題解答編-
関数の直交について
ある区間で直交する関数f(x),g(x)のお話をいたしました。ベクトルの内積の直交条件と同様に、ある積分区間での定積分が0になる時、2つの関数は直交するといいます。問題をあげておきましたので、その解答を示します。
問題の解答について
【問題1】
n=1,2,3・・・・・に対して、an=\(\int_{-π}^{π}(x sin nx)dx\), In=\(\int_{-π}^{π}(πx-\sum_{ k = 1 }^{ n } a_k(\sin nx)^2)dx\) と定義します。
(1)n=2,3,4・・・・・・に対して、In-In-1 をnを用いて示してください。
(2)n=1,2,3,・・・・・・・に対して、\(\sum_{k=1}^{n}(\frac{1}{k^2})^2\)≦\(π^2/6\) を示してください。
【解答1】
(1)In- In-1 の絶対値は、\((-1)^(n+1)\frac{2π}{n} \sin nx\)のみに着目すればよいですから、\((2π/n)^2\int_{-π}^{π}(\sin nx)^2dx\)=\(4π^3/n^2\) ですから、\(4π^3/n^2\) が答えです。
(2)(1)の結果から、In-I1=\(\sum_{k=2}^{n}(I k-I k-1)\)=\(\sum_{k=2}^{n}\frac{4π^3}{n^2}\) となりますから、I1を計算すると、\(2/3・π^5-4π^3 \)となり、式変形をすれば、In≧0から、\(\sum_{k=1}^{n}\frac{1}{k^2}\)≦\(π^2/6\) がなりたちます。
(注)\(\displaystyle\sum_{k=1}^{∞}\frac{1}{k^2}\)=\(π^2/6\) がオイラーによって示されていて、これをバーゼル問題といいます。
【問題2】
mを自然数として、tをltl<1を満たす実数とします。関数f(x)=\(1-2tcos x+t^2\) とします。
(1)定積分 \(\int_{0}^{π}(\frac{cos mx}{f(x)})dx\) の値を求めてください。
【解答2】
これだけでは、かなり難しいかも知れません。実際の問題には誘導がついていますが、省略しました。
これは、高校数学を越えています。\(\frac{1-t^2}{f(x)}\)=\(\frac{1+t^2}{1-2tcos x +t^2}\)=\(\frac{1}{1-te^(-ix)}\)+\(\frac{t e^(-ix)}{1-te^(-ix)}\)=1+2\(\sum_{n=0}^{∞}t^n\cos nx\)となりますから、チェビシェフの多項式fn(x)を用いて, \(\frac{1-tx}{1-2tx+t^2}\)=\(\sum_{n=0}^{∞}fn(x)t^n\) となります。
ここで、\(\int_{0}^{π}( cos mx cos nx )dx\) =0 (m≠n), π/2(m=n) ですから、 \(\int_{0}^{π}(\frac{cos mx}{f(x)})dx\) =\(\int_{0}^{π}\frac{1+2\sum_{n=0}^{∞}t^n\cos nx\cos mx}{1-t^2}dx\)=\(2t^m\)・(π/2)・1/(1-t^2)=\(\frac{πt^m}{1-t^2}\) となります。