東京大学の理系数学の入試問題をどう解くか
東京大学理系数学の入試問題をどう解くか
最難関と言われている東京大学、京都大学などの入試問題をどう解くのかを考えてみましょう。この2校は、ほぼ毎年、6題、試験時間150分となっています。難関大と言われる東工大、大阪大学、名古屋大学、東北大学などは、4問、5問になったり、180分になったり若干の差はありますが、ほぼこのような傾向となっています。ここでは、東京大学の実際の入試問題を例にして、どのように問題を解くかを考えて見ましょう。
東京大学理系数学の入試問題の解き方
【問題1】
正の実数\(a\)に対して、\(xy\)座標平面上で、次の放物線を考える。\(C:y=ax^2+(1-4a^2)/4a\) \(a\)が正の実数全体を動くとき、\(C\)の通過する領域を図示してください。
【解き方】
この問題は、東大の理系数学の問題でも、易しい問題だと思います。これは落とせません。問題文を見たら、すぐに方針がたつと思います。与えられた放物線を\(a>0\)だから、\(a\)の2次方程式に帰着できると気づけば、2次方程式論にもっていって、終わりです。計算間違えさえしなければ、完答できます。これは完答しなければ、合格はおぼつかないでしょう。
【問題2】
\(a\)を自然数の定数とします。白球と赤球あわせて1個以上入っている袋\(U\)に対して、次の操作\((*)\)を考えます。
\((*)\) 袋\(U\)から玉を1個取り出し、
(ⅰ)取り出した玉が白球のときは、袋\(U\)の中身が白球\(a\)個、赤球\(1\)個となるようにします。
(ⅱ)取り出した玉が赤球のときは、その玉を\(U\)に戻すことなく、袋\(U\)の中身はそのままとします。
はじめ、袋\(U\)の中に、白球が\(a+2\)個、赤球が\(1\)個入っているとし、この袋\(U\)に対して操作\((*)\)を繰り返し行います。\(n\)回目に取り出した玉が赤球である確率を、\(p_n\)とし、袋の中の個々の玉の取り出す確率は等しいものとします。
(1)\(p_1、p_2\)、及び\(n≧3のときのp_n\)を求めてください。
(2)\(\displaystyle \lim_{ m \to \infty }1/m\displaystyle \sum_{ i = 1 }^{ n } p_n\)を求めてください。
【解き方】
確率の問題は、毎年理系数学の問題として出題されています。その傾向と難度をよく検討しておくべきでしょう。
\(p_1、p_2\)はすぐ求まると思います。問題文がごついので、少し萎えてしまうことがあるかもしれませんが、\(p_n\)を求めればいいはずで、(2)はこれが求まれば計算だけのはずです。ここは、全力でどうやって\(p_n\)を求めるかを考えましょう。一般項を求めるのですから、数列における漸化式を考えればいいのだろうと考えるのは、素直です。やってみると、なんだ!ということになりそうです。しかしながら、試験場で冷静に判断できるかが勝負だろうと思います。
【問題3】
\(a\)を実数として、\(x>0\)で定義された関数 \(f(x),g(x)\)を \(f(x)=cosx/x,g(x)=sinx+ax\)とします。\(y=f(x)とy=g(x)\)が\(x>0\)に共有点をちょうど3つもつような\(a\)をすべて求めてください。
【解き方】
共有点ですから、\(f(x)=g(x)\)となる\(x>0\)の実数解が3つ存在する\(a\)を求めればよいことになります。等式は、定数と変数を分離することができます。(\(x>0\)) これに気づくことが解法へのポイントになると思います。あとは、変数\(x\)の部分を、微分してグラフの概形がわかれば、計算は少し面倒ですが、確実に解くことができます。これも完答を目指しましょう。
【問題4】
空間座標において、\(xy\)平面内で不等式 \(\vert x \vert≦1、\vert y \vert≦1\)により定まる正方形\(S\)の4つの頂点を、\(A(-1,1,0),B(1,1,0),C(1,-1,0),D(-1,-1,0)\) とします。正方形\(S\)を,直線\(BD\)を軸として回転させたときにできる立体を\(V_1\),直線\(AC\)を軸として回転させてできる立体を\(V_2\)よします。
(1) \(0≦t<1\)を満たす実数\(t\)に対し、平面\(x=t\)による\(V_1\)の切り口の面積を求めてください。
(2) \(V_1とV_2\)の共通部分の体積を求めてください。
【解き方】
東京大学では、空間図形の問題がよく出題されます。空間図形は、平面図形と違ってイメージしにくい場合が多いですから、日ごろから演習を十分やっておくべきだと思います。
\(V_1\)も\(V_2\)も正方形の対角線を軸とする回転体ですから、2つの円錐の合体した図形の側面とその内部になることは、すぐ分かります。\(V_1\)を\(x=t\)で切れば、円錐を斜めの平面で切断することですから、切り口は、放物線になるのは容易にわかります。あとは、これを座標で表し、丁寧に計算すればいいことになります。空間図形はイメージしにくいので、解きにくいかもしれませんが、出来そうな問題からやって部分点狙いでもよいかもしれません。
【問題5】
\(△ABC\)において、\(∠BAC=90°、\vert \overrightarrow{ AC } \vert=\sqrt{3}\)とします。\(△ABC\)の内部の点\(P\)が次の関係を満たすとします。
\( \overrightarrow{ PA }/\vert \overrightarrow{ PA } \vert+ \overrightarrow{ PB }/\vert \overrightarrow{ PB} \vert+\overrightarrow{ PC }/\vert \overrightarrow{ PC} \vert=\overrightarrow{0}\)
(1)\(∠APB、∠APC\)を求めてください。
(2)\(\vert \overrightarrow{ PA } \vert、\vert \overrightarrow{ PB } \vert、\vert \overrightarrow{ PC} \vert\)を求めてください。
【解き方】
これは、ベクトルでも特に(1)は標準的です。これは、秒殺でしょうか。すぐに解法が思い浮かんできますので、おそらくほとんどの受験生ができたのではないでしょうか。(2)をどう得点するかですが、座標を考え、\(P\)の座標を求めることを考えるのは、それ程難しくないでしょう。
【問題6】
\(m\)を\(2015\)以下の自然数とするとき、\({}_{2015}\mathrm{ C }_n\)が偶数となる最小の\(m\)を求めてください。
【解き方】
問題文は簡単ですが、一瞬どういうことなのか、と迷うかもしれません。\({}_{2015}\mathrm{ C }_n\)を式で書いてみると、\({}_{2015} \mathrm{ P }_m/m!\)ですから、分子に存在する素因数\(2\)の個数が、分母の\(m!\)に含まれる2の個数より大きくなるような最小の\(m\)を見つければいいことになります。さらに見やすく式変形すれば、正答に到達できると思います。少し試行錯誤はあるかもしれませんが、よく考えればできると思います。