ポアンカレ予想 -何これ?-
未解決問題としての予想
100年から300年以上に渡って、未解決であった数学上の予想で有名なものは、フェルマーの大定理(フェルマー予想)、リーマン予想、ポアンカレ予想ではないかと思います。フェルマー予想は、ワイルズによって1995年に証明され、ポアンカレ予想は、ロシアのペリルマンによって、2002年に証明されています。リーマン予想は、160年以上たった今でもまだ未解決です。フェルマーの定理、リーマン予想は割合理解はしやすいですが、フェルマーは中学生でも問題の意味は分かります。ところが、ポアンカレ予想は、証明されてしまったので、ポアンカレの定理と言った方がいいかもしれませんが、これがとても分かりにくいものになっています。どうして分かりにくいのでしょうか。それは、ポアンカレ予想が、トポロジー(位相幾何学)と言う分野の予想だからだと思われます。
ポアンカレ予想とは何か
よく例に出されるのは、「ロケットがひもを垂らしながら飛んで戻ってきた時にそのひもの両端を引っ張ったらひもが回収できるなら、宇宙は球であろう」などと言うものがあります。これは問題の捉え方としては正しいのですが、このままではポアンカレ予想の説明としては、正しいとは言えません。では、ポアンカレ予想を正確に表現するとすればどうなるのでしょうか。
ポアンカレ予想を正確に言うと
「単連結な3次元閉多様体は、3次元球面に同相であろう。」と言う事になります。ひらがなの部分以外の部分は全て説明が必要なのだと思われます。少なくとも高校数学、大学の教養レベルでは、難しいと言わざるを得ません。
ポアンカレ予想の言葉の意味
3次元球面を読んだ時に、これは、3次元のなかの球でもなければ、球面でもありません。3次元球面は、S^3とかかれます。もしこれが、3次元の球だとすれば、これは球体と言い球面とは区別されます。球面だとするとこれは、その表面は2次元であって、これは、2次元球面S^2とかかれます。S^2は2次元ではありますが、平面図形だと言う訳ではありません。S^2を地球と考えたら、その上に住んでいる人にとっては、どこに立っても平面的な広がりがあると言うことであり、どの地点でも経度と緯度の2つで表されます。これが、2次元と言う事なのです。そして、多様体と言う言葉は、こう言う対象であって、2次元多様体と言えば、曲面の事を指すのです。また特に境界がなく無限の広がりを持たない(コンパクトと言います)2次元多様体を、2次元閉多様体というのです。一般にn次元多様体というものは、どこに立っても十分な近傍は、R^nだと思えてしまうような空間のことなのです。我々が生きている中で、自分を中心にして前後、左右、上下の3方向に伸びる3次元空間を感じる事が出来ます。しかしながら、これが感じられるのは、自分の居るごく近傍で言えることであって、その先は分からないと言えます。また、単連結と言う言葉は、その空間内にあるある点を出発して戻ってくるようなひも(ループ)と言います。)がいつでも回収できる事を言います。ポアンカレ予想は、3次元閉多様体については、単連結と言う条件だけで3次元球面に同相と言っているのです。さらなる詳細はトポロジーの知識が必要になりますので、相当難しくなります。
ポアンカレ予想の証明過程
ポアンカレ予想は、実は高次元の方が先に証明されています。1961年に、スメールによってn≧5のn次元のポアンカレ予想が証明されています。普通は、nの小さい方から証明されるのが普通ですが、ポアンカレ予想ではそうではありませんでした。そうして、最後の最後に残ってしまったのが、3次元のポアンカレ予想だったのです。ペリルマンはリッチ・フローという方法で、2002年にポアンカレ予想の3次元の場合を証明し、ついにポアンカレ予想は、定理になったのです。