ベクトル-物理学でも重要な概念、ベクトル解析へのいざない-
ベクトルの概念
ベクトルは、大きさと方向を持ったものとして定義され、力学などでも重要な概念です。大きさだけで方向を持たないものはスカラーと言いますが、これと厳密に区別されます。ベクトルを表すのに文字の上に→を書いたもので表しますが、大学では、2重文字でベクトルを表す事が多いようです。ここでは、太字の文字を、ベクトルとして表す事とします。例えば、a はベクトルを表すものとし、普通のaはスカラーを表すものとします。
ベクトルの演算
a+bは、aとbの足し算ですが、aの終点とbの始点をあわせたときの平行四辺形の終点とするベクトルとなります。ベクトルの引き算は、-b の足し算とすれば、容易に理解できると思います。ベクトルの掛け算は、高校では内積として定義され、これはスカラーとなります。ベクトルaとbの内積は、a・bで表され、幾何学的には、a、bのなす角をθとすると、a・b=lal・lblcosθ で表されます。また、直交座標で表すと、
a・b=a1b1+a2b2+a3b3 で表されます。ここで、a=(a1,a2,a3)b=(b1,b2,b3)です。これは、余弦定理と上の幾何学的な内積の定義から、容易に示すことが出来ます。
ベクトルの外積
高校ではベクトルの掛け算は、内積のスカラーのみですが、大学では、ベクトルの外積を学びます。これは、axbと書きますが、ベクトルの外積は、ベクトルとして定義されます。ベクトル解析や物理学の法則は、3次元で考えられる事が多いですが、内積と外積を共用して表される事が多いですので、外積の定義も覚えておくと良いでしょう。ベクトルの外積の定義は、大きさはaとbで張られる平行四辺形の面積を表し、その方向は、aをbに右ねじに回転した時に、その進む方向として表されます。
平行6面体の体積を求める
内積と外積をともに使うと、a、b、cで形成される平行6面体の体積も求めることが出来ます。a、b、cで形成される平行6面体の体積は、a・(bxc)で表されます。bxc の大きさは、b、cで形成される平行四辺形の面積ですから、これを底面とみれば、aとbxcの内積は,aの終点からbxcに下ろした垂線の長さになるのでこれは、平行6面体の高さになります。従って、a・(bxc) は、a、b、cで形成される平行6面体の体積となる訳です。
ベクトルに関する問題
ここで、ベクトルに関する問題をあげておきましょう。
【問題】
同一直線状にない異なる3点A,B,Cに対し
kPA+4PB+PC=0、k>-5を満たす点Pがあるとします。
(1)kがk>-5の範囲の任意の値をとるとき、点Pの集合はどんな図形でしょうか。
(2)線分ACを2:1に内分する点をDとします。点Pが線分DB上にあるときのkの値を求めてください。また、DP:PBを求めてください。
(3)BA=BCである時、線分PBが∠ABCを2等分するように、kの値を求めてください。
PA などは、始点P終点をAとするベクトルをあらわすとします。