フェルマーの最終定理の証明-オイラーの証明-
フェルマーの定理の証明
フェルマーの最終定理は、1995年にアンドリュー・ワイルズにより証明されたことは、すでに説明いたしました。フェルマーの最終定理の証明には日本人数学者も相当貢献しています。フェルマーの定理の証明に貢献した人々
フェルマーの定理(大定理、最終定理)をもう一度書いておきましょう。
「n≧3の整数とするとき、x^n+y^n=z^nの自然数解は存在しない。」
フェルマーは自ら考案した無限降下法によって、n=4の場合は証明していただろうと言われています。当初、nの小さいものから証明されていきました。
n=3のときは、オイラーによって証明され、n=5の場合はディリクレ、ルジャンドルが証明したと言われています。その後もn=7などがラメらによって証明されましたが、これらのやり方は限界がありました。全ての場合を証明したのは、1995年のワイルズです。証明は、Annals of Mathematics に2編発表されていますが、そのうちの主論文はこちらになります。Wilesの主論文 もう一つは、TaylorとWilesの共著で、割合短いものですが(Ring theoretic properties of a certain Hecke algebras.)、1994年に発表した論文の間違いを補完するもので、この2本の論文でフェルマーの最終定理は、証明されたのでした。
フェルマーの定理のn=3の場合の証明
(1)小手試し やさしい問題から
x^3+y^3=z^3 でz=素数のときは、自然数解は存在しない。
(証明)
この問題は、大学入試問題でも通用します。z=p=素数というだけで、事情は変わってきます。問題をわかりやすく書き直してみましょう。
x^3+y^3=p^3・・・・・・・・・・・① (ただしpは素数) は、圧倒的に証明は易しくなります。
①が自然数解をもつとします。
①から、(x+y)(x^2-xy+y^2)=p^3・・・・・・・・・②であって、(x^2-xy+y^2-(x+y)=(x-y)^2+xy-x-y=Z(x-y)^2+(x-1)(y-1)-1でx,y≧2ですから、x^2-xy+y^2>x+yがわかります。従って②式とpが素数(p≧2)であることから、x^2-xy+y^2=p^2かつx+y=p
これから、xy=0となり、x,yが自然数であることに矛盾します。従って、①は自然数解をもちません。あっという間に証明できてしまいました。でも特殊な場合とはいえあのフェルマーを証明できたんだと言うことは、自信になるかもしれません。
(2)x^3+y^3=z^3・・・・・・・・③は自然数解を持たないことの証明。(Euler)
次は、n=3とはいえ難問です。代数的整数論の世界に入っていきます。
やはり、背理法を使うことになります。前半は初等的ですが、後半はかなり難しくなります。
③にxyz≠0の自然数解が存在すると仮定し、\vert z \vertは最小だとします。x,yに公約数dがあれば、③の両辺をd^3で割ればよいから、x,yは互いに素とできます。そこで、x,y,zのどれか1つが偶数であることがわかります。また、x,yは奇数、zは偶数としてよいことになります。ここで、p=(x+y)/2, q=(x-y)/2とおくと、p,qは整数で、x=p+q, y=p-q・・・・・・・・④です。p,qのどちらかが偶数で他は奇数です。④を③に代入すると、2p(p^2+3q^2)=z^3・・・・・・・・・⑤ が得られます。
そこで、(ⅰ)2pとp^2+3q^2が互いに素 の場合と(ⅱ)1以外の公約数をもつ 場合 に分かれます。
(ⅰ)の場合を考えてみます。(ⅱ)もほとんど同様に論理展開することができます。
⑤より、p^2+3q^2=3乗数・・・・・・・・・・・⑥、かつ 2p=3乗数・・・・・・・・・・・⑦
⑥を実数の範囲で因数分解すると、(p+\sqrt{-3}・q)(p-\sqrt{-3}・q)=3乗数・・・・・・・・・⑧
ここで、m,nを整数として、m+n・\sqrt{-3}と表される複素数の集合を、\mathbb{ Z[\sqrt{-3}]} とすると、α、β、γ \in \mathbb{ Z[\sqrt{-3}]} について、α=βγが成り立ち、α≠±1でβかγを割り切るとき、素数と同じ扱いをする事ができます。このような新たな代数的数を取り扱うことにより、精密な議論のもと、
p+\sqrt{-3}・q=(a+\sqrt{-3}・b)^3 a,bは整数・・・・・・・・・⑨ と書けることがわかります。
⑨から、普通の複素数の実部、虚部を考えて、
p=a(a+3b)(a-3b) また、⑦から、2a(a+3b)(a-3b)=3乗数 となります。この3つの因数は、互いに素であることが示せますから、それぞれ3乗数であることがわかりますから、a+3b=X^3,a-3b=Y^3、2a=Z^3とおくと、X^3+Y^3=Z^3となります。これは、③式と同じ形ですが、あきらかに、0<\vert Z \vert<\vert z \vertです。この結果は、③に解が存在すれば、さらに小さい解が存在することを示して矛盾します。従って背理法により③は、自然数解は持ちません。(Q.E.D.)
ここで用いた論法は、フェルマーが考えた無限降下法と言われています。フェルマーは、n=4の場合を、無限降下法で証明したであろうと、現在では考えられています。